のぉ れいん のぉ れいんぼう

田邊裕貴の見た色々を雨のように、あなたの中に今まで無かったものを

のぉれ

天才たなべの大冒険

タダより高いものはない

 

TSUTAYAに行った

入り口で無愛想な男が祭りをしていた

タダより高いものはない


ヨーヨー釣り、ポップコーン、わた菓子


TSUTAYAの入り口で。


見てるこっちがちょっと恥ずかしい


店内は涼しいけど入り口は暑い



TSUTAYAには50分いた


この夏休み終了間近の超忙しい高校生が50分もいなければならなかった

 

田舎のローカル線は昼過ぎなどは1時間に1本しか来ない



店に入って30分ぐらいで気になる本があった


20分、本を片手に歩いた


その本を買うと決めたら退屈な20分

20分後、その本を買った


1500円、漫画を3冊買うより勉強になるはず。


これは有意義な買い物のはず。



「レシートを入り口のスタッフに見せると祭りに参加できますので」


店員はそう言った。


参加しないという選択肢が逃げていった



貰えるものは貰っとけ


タダより高いものはない



入り口に向かうと、男は待っていたかのように


問題を出してきた



「ポップコーンか、わたが…」


「ポップコーンで」



即答した


なぜヨーヨー釣りは聞いてこなかったかは置いておいて


本当はわた菓子が良かったが


わた菓子を持って自転車に乗っている自分を想像して即答した。



男はため息混じりに紙コップ一杯のポップコーンを差し出してきた。






外に出るとこぼれおちそうなポップコーンを急いで食べる



味は、無い



と思ったのは最初のひとつだけで、あとは塩辛いぐらいだった


いざ自転車に乗るときに気づいた。


紙コップを片手に自転車に乗ってる奴なんてそういない。


わた菓子ほどでは無いが、シュールな画。


しかし50分待った電車はもうすぐ来る


ゆっくり食べてから駅に行く時間はない


紙コップ片手に信号待ちをする


はたから見ればただの紙コップだが


それはポップコーン


こっちは恥ずかしい。





人が歩いてくる


私はポップコーンであることをバレたくない


だが、そこに段差はあった。


私の左手は最大限衝撃を吸収した


しかしこぼれるポップコーン


私は見た


しっかり見てみぬふりをする通行人Aを


唐突に紙コップからポップコーンが噴き出しているのをみて


通行人Aは何を思ったのか


知る由もない





駐輪場につき、左手の紙コップのせいで駐輪するのにも苦戦した


駐輪場のおばちゃんは思ってもいなかっただろう


それはポップコーン





駅への最後の信号をポップコーンを食べながら待つ


電車に持って入れないから、すごい勢いで。


信号のすぐ横で待機していた駐在さんはこれを注意しようとはしなかった



俺が思っている以上に


学生服の男子高校生が紙コップに入っているポップコーンを食べていても


あまり気に留めていないと


わかっているつもりではあったが


改札をくぐる時も


駅のホームへの階段を登る時も


ホームでも


塩辛いポップコーンを食べ続けた



どうして私だけがこんなに辛いのだろう


どうして私は祭りに参加したのだろう



なんとか電車が来るまでに食べ終わり



紙コップを可燃ごみのゴミ箱へゆっくりと落とした






タダより高いものはない


















Fin.